ネックレスを糸替えに出したら真珠をすり替えられた!?
このような話を聞かれたことがある方も多いと思います。また、こういう話があるからネックレスを糸替えに出すのをためらっているという方もいらっしゃるでしょう。
そこで、専門店として、また修理を承っている者の一人としてこの件についてお話します。
プロの立場からすると非常に明解なので最初から結論に近い答えになってしまいますが
すり替えても全く得をしないどころか損をするので、すり替える理由がない
というのが正直なところです。
道義的に得をしないことはもちろん、金銭的に考えても全く得をしません。
その理由としては
- ネックレス用の真珠は普通16インチ(約40cm)単位で取引されており、仮に数個だけを入れ替えて入手したとしても16インチに満たない分を新たに揃えねばならず、中途半端な長さでの取引はかえってコスト増になることもあります。サイズ、品質、色を吟味しながら真珠を選別する手間とコストを考えると新規に16インチで仕入れる方が余程安く時間もかかりません。そもそもネックレスの真珠には穴が貫通(両穴)しており1珠単位で活かすことも難しいです。
真珠の評価はサイズと美しさのランクが同じであれば
無穴>片穴(イヤリングや指輪用)>両穴(ネックレス用)です。
すり替えた真珠を少しずつ集めて一本のネックレスに・・・と思われるかもしれませんが、普通は16インチの連を1本組むためにバケツ1杯分かそれ以上もの真珠の中から品質、色を揃えて選別しています。少しずつ真珠を集めて1本にということは物理的に不可能です。
- 全部をすり替えるとしても、真珠店、真珠会社であれば、まっさらの真珠を仕入れられるので、わざわざ年数を経た真珠をリスクを犯してまで入手する理由がありません。しかも養殖技術は年々進化しているので、昔は高価であった真珠でも、今なら同等の真珠をぐっと安価で仕入れることができます。
この2つが最も的を射ているかと思います。
プロならある程度の年数を経過した真珠は一目見れば分かりますので、新品の商品として売ることもできません。
悪意があると仮定しても年数を経ている上に穴が貫通している真珠に手をつけることはないでしょう。
では、なぜすり替えられたという話があるのでしょうか?
- 戻ってきたネックレスを疑いの目でじっくり見たため、今まで気付かなかった天然キズに気がついた。
- お店側の管理ミスで返却するネックレスを間違えてしまった。
これらが考えられる理由です。
ヨコタパールにも過去何度か「(他店で)端の数個をすり替えられたかもしれないから見て欲しい」とおっしゃってネックレスを持ってこられた方がいらっしゃいましたが、いずれもネックレスに不自然な点はなく、新品のときからこの状態だったと思われる物ばかりでした。
昔は中級以下のネックレスを組む時に真ん中辺りに比較的綺麗な真珠を集めておき、端の方に多少キズが多かったり形が歪んでいる珠を使うことでリーズナブルな価格にしていた物がよくありました。ごまかしではなく、当時はお客様のニーズに合わせるための1つの方法でしたが、今はあまりそういう組み方のネックレスは見られません。
糸替えから戻ってきた後、じっくりと観察することで初めてその端の方のキズや歪みに気付く方も多いと思われます。
それと、残念ながら
- 50年以上前であれば本当にすり替えのようなことがあったかもしれない
ということも考えられます。
真珠に限らず、いろんな物が一般の人たちにとって高嶺の花であったため、当時は悪意を持って修理に当たった人がいなかったとは言い切れません。(真珠会社にはいなかったと信じていますが)
そのような経験をお持ちの方からの伝聞で実際にはすり替えを経験していない方までもが警戒心を持っているためにいまだに語り継がれているのかもしれません。
結論
少なくとも21世紀の現在、真珠店、真珠会社がお客様の真珠をすり替えて得をする術は全くと言って良いほどありませんので、すり替えを心配される必要はないと思います。
ただ、人的ミスで他のお客様のネックレスをお返ししてしまうということは皆無とは言い切れませんので、ヨコタパールでもお客様のネックレスの管理には神経を使っています。
どんなお店でも(ロングのネックレスの場合は特に)その場ですぐに作業できることは少ないですので、どうしても数日は預けなければならないでしょう。
ですから、まずは安心してネックレスを預けることができるお店(真珠専門店)を見つけることが大切です。